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宮前バスの旅

「新17 聖マリアンナ医科大学〜新百合ヶ丘駅」の旅

第15回

提供:川崎市
宮前区内を走るバスは約45路線。坂が多い地域でもあり、バスは日常の足として欠かすことができないものです。
そんな移動手段としてふだん利用している路線バスも、のんびり“バスの旅”を楽しめば、窓の外には今まで知らなかった風景が待っています。
毎回、ひとつの路線を始発から終点まで乗車し、気になる停留所に途中下車。そこで出会ったものを紹介します。

路線案内

【運行バス】 小田急バス
【系統名】  新17
【おもな停留所】 聖マリアンナ医科大学−西長沢−王禅寺公園−山口台中央−新百合ヶ丘駅
【運行距離】 約6.6km
【経路】 聖マリアンナ医科大学病院のバスロータリーを出て、マリアンナ医大前交差点を左折。西長沢交差点で右斜め方向に進み、餅坂を上ったつきあたりを左折。尻手黒川道路を横断した後、白山小南交差点で右折。吹込交差点を左折し、尻手黒川道路に入って次の交差点で右折。小田急線高架橋の手前で右折し、新百合ヶ丘駅のバスロータリーへ。
【特徴】 宮前区菅生にある聖マリアンナ医科大学病院と小田急線新百合ヶ丘駅をつなぐ。路線沿いには住宅地が連なり、高校もあるため、通勤通学に利用する人が多い。運行回数は平日の8〜17時台は1時間に4〜5便で、朝7時台は7便。夕18〜21時台は2〜3便になる。土曜・休日の9〜18時台は4便。
聖マリアンナ医科大グランド前
聖マリアンナ医科大グランド前
原店前
原店前
王禅寺公園
王禅寺公園
新百合ヶ丘駅
新百合ヶ丘駅

バス旅記

花の期間は梅園に入場可。<br>花を間近に見上げると幸せな気持ちに。
花の期間は梅園に入場可。
花を間近に見上げると幸せな気持ちに。
聖マリアンナ医科大学停留所からバスに乗る前に行きたい場所があります。それは次の停留所の聖マリアンナ医科大グランド前から歩いて1〜2分のところにある「岸井梅園」。約900坪の敷地に梅の木が100〜120本植えられ、2月中旬〜3月上旬に花の見頃を迎えるのです。
 「今年は暖かいから、花がどんどん開いちゃってね」と梅園の方がおっしゃるように、訪れると梅の花は満開。うららかな陽ざしを浴びた白い花のなかをうぐいす色のメジロが飛びまわっています。
 「メジロは木から木へ移動しながら、梅の花の蜜を吸っているんだよ」と、梅園で会った男性。メジロがせわしなく動くたびに花びらがひらひらと降ってきて、趣を感じます。
 梅園では5月下旬〜6月中旬に青梅の実を収穫。その時期に訪れた人は梅園でとれたばかりの青梅の実をはじめ、梅干しや梅ジュース、梅ジャムなどを購入することができます。
クスノキの向こうには紅梅。<br>「甘い香りがするね」とお母さんと子ども。
クスノキの向こうには紅梅。
「甘い香りがするね」とお母さんと子ども。
さて、聖マリアンナ医科大グランド前停留所からバスに乗りましょう。商店街を抜けて、ゴウゴウと排気音を鳴らしながら上り始めたのは「餅坂」。急勾配のうえ、カーブが続くので、バスを運転するのは神経を使いそうです。
 そんな坂道の甲斐あって(?)、左手に家並みが続く見晴らしが広がりました。これは見逃せないと、原店前停留所で下車。このあたりは尾根道で、前方には百合ヶ丘方面、左方には横浜方面、後方には東京方面を見渡せます。また、明治9年(1876)に峠の茶屋として開店した「原店」が2〜3年前まで営業しており、いまもその名がバス停の名前に残されています。
 少し歩いたところには、川崎市選定「まちの樹50選」のクスノキ。当時、道行く人々はこの大きな木を目印にしていたかもしれないなあと見上げます。
小高い丘に遊歩道がめぐらせてある<br>王禅寺公園。住宅街の静かな場所。
小高い丘に遊歩道がめぐらせてある
王禅寺公園。住宅街の静かな場所。
バスは坂を下り、住宅街のなかを行きます。右手に見えたのは「王禅寺公園」。小高い丘があり、斜面に赤、白、ピンクの花が咲いています。あれはサザンカかな? ツバキかな? と思いながら、バスを降りて公園へ。丘に伸びる遊歩道へ進みます。
 階段を上って木々のあいだをいくと、ちょっとした探険気分。遊歩道は丘の山頂へ到達します。先ほどの花を今度は見下ろして、きょろきょろ。花が散る際に花びらが1枚1枚落ちるのがサザンカ、花全部がぽとっと落ちるのがツバキ……と木のまわりを見たのですが、枯れ草が茂っていてよく見えません。
 葉の付け根に毛が生えているのがサザンカ、生えていないのがツバキ……と間近で見てみたいのですが、斜面を下りていくことはできません。公園のそばを通りかかったおばあちゃんに聞いても、「私もわからないのよねぇ」。サザンカかツバキか、やっぱりどちらかわかりません。
新百合山手のガス灯が並ぶ通りで<br>出迎えてくれる<br>川崎市アートセンター(左側手前)。
新百合山手のガス灯が並ぶ通りで
出迎えてくれる
川崎市アートセンター(左側手前)。
新百合ヶ丘駅に着いて、向かったのは駅北口。2008年秋に「万福寺土地区画整理事業」が完了し、約37ヘクタールの新しい街「新百合山手」が誕生しました。
 新百合ヶ丘駅周辺は音楽大学や映画学校のほか、劇場やホールがそろい、「KAWASAKIしんゆり映画祭」「麻生音楽祭」といったイベントが行われるなど、「しんゆり・芸術のまち」としての街づくりが続けられています。新百合山手の入口には、その中心的存在の「川崎市アートセンター」が建ち、文化の香りをぷ〜んと漂わせているのです。
 丘陵地帯の豊かな自然をいかし、事業地の約1/4が公園や緑地とされているのも、新百合山手の特徴のひとつ。緑あふれる洗練された街を散歩するのは、とっても気持ちがよいのでした。

2009年2月中旬に取材しました。
文・写真・地図:森田奈央
川崎市在住のフリーライター。散歩が好きで、好奇心のおもむくままに日々歩きまわっている。著書に猫を追いかけて歩いた「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)。