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宮前バスの旅

「溝19 おし沼〜溝口駅南口」の旅

第16回

提供:川崎市
宮前区内を走るバスは約45路線。坂が多い地域でもあり、バスは日常の足として欠かすことができないものです。
そんな移動手段としてふだん利用している路線バスも、のんびり“バスの旅”を楽しめば、窓の外には今まで知らなかった風景が待っています。
毎回、ひとつの路線を始発から終点まで乗車し、気になる停留所に途中下車。そこで出会ったものを紹介します。

路線案内

【運行バス】 川崎市バス
【系統名】  溝19
【おもな停留所】 おし沼−向丘出張所−神木本町−上作延−溝口駅南口
【運行距離】 約4.9km
【経路】 おし沼停留所がある川崎市交通局のバス折り返し所を出発。向ヶ丘遊園駅菅生線を直進し、平2交差点を左折。直進し、東名高速道路の高架をくぐった後も、ひたすら直進。国道246号の津田山陸橋、東急田園都市線の高架をくぐったら、溝口駅南口停留所があるバスロータリーに到着。
【特徴】 出発地は多摩区東生田。宮前区の北部を通り抜け、高津区のJR南武線武蔵溝ノ口駅、東急田園都市線溝の口駅へ向かう。運行回数は平日と土曜の朝7〜8時台は1時間に4〜6便だが、9〜18時台は1〜2便、休日は終日1〜2便。堰下停留所から「溝17」「溝18」が同じ経路で溝口駅南口停留所までいく。おし沼停留所のそばには生田緑地、途中の森林公園前停留所のそばには東高根森林公園があり、自然を身近に感じられる路線。
おし沼
おし沼
たいら高山
たいら高山
とのした橋
とのした橋
森林公園前
森林公園前
溝口駅南口
溝口駅南口

バス旅記

おし沼停留所から徒歩10分以内で<br>生田緑地ばら苑への遊歩道入口。<br>緑のなかを歩いていきたい。
おし沼停留所から徒歩10分以内で
生田緑地ばら苑への遊歩道入口。
緑のなかを歩いていきたい。
おし沼停留所の「おし沼」という地名は、漢字で書くと「鴛鴦沼」。「おし沼自治会」のHPによると、昔、鴛鴦(おしどり)が棲んでいた沼があったことに由来するとか。漢字の文字がむずかしいため、いまではひらがなで書くひとが多くなったとのことですが、はい、確かに「鴛鴦」書けません。
 おし沼の周辺では、約30万年前の海進によって堆積された地層が発見され、「おし沼砂礫層」と呼ばれています。以前、「生田緑地」の「枡形山」の山道で、その砂と石が重なって表面がざらざらとした砂礫層を見たことがあったのを思い出しました。
 生田緑地といえば、「生田緑地ばら苑」も思い出します。平成21年春の開苑は5月14日〜6月7日(月曜休)。約550種4700株のバラが咲くさまを入苑無料で見ることができると思うと、バラの甘い香りまでほわわんと思い起こされるようです。
高山さくら公園の名に恥じない<br>見事な咲きっぷりの八重桜がずら〜り。
高山さくら公園の名に恥じない
見事な咲きっぷりの八重桜がずら〜り。
さあ、おし沼停留所からバスに乗りましょう。と思ったら、次のバスは30分後。うーん、と考えて、お隣のたいら高山停留所まで歩きます。
 たいら高山停留所の「たいら高山」は、漢字で書くと「平高山」。漢字の文字はむずかしくないけど、平らな山なのか、高い山なのか、平らで高い山なのか、そんな山あるのか、わからなくなってしまいそうな字面。だから、ひらがなを使って「たいら高山」としたのかな? と考えながら、平2丁目の高山団地へ。急坂の途中で2基の庚申塔を見つけます。
 「この花は八重桜よ」と教えてくれたのは、「高山さくら公園」でシートを敷いてお花見していたおかあさん。「20〜25年前に引っ越してきたころはゴールデンウィークが見ごろだったけど、少しずつ早くなって、今年は4月中旬にもう満開になっちゃったわね」。
 真っ青な空の下、公園には桜のピンクと新緑のグリーンが重なりあう風景が広がっています。
だれもいない神木天満宮。<br>新緑に彩られたおだやかな時間を<br>ひとりじめ。
だれもいない神木天満宮。
新緑に彩られたおだやかな時間を
ひとりじめ。
たいら高山停留所からバスに乗って、降りたのは、とのした橋停留所。漢字で書くと「殿下橋」。停留所のそばに平瀬川が流れ、「殿下橋」と「新殿下橋」が架けられています。交差点の名前も「殿下橋」とあり、どうしてバス停はひらがなにしたのかな? と考えながら、新殿下橋を渡ります。
 つきあたりに長い階段と鳥居が見えてきました。階段の両側にはつややかな若葉を茂らせているツツジが並び、深紅の花を咲かせているものもあります。近所のおばあちゃんが「ここにはツツジだけじゃなくて、サツキも植えられているの。ツツジが咲き終わったらサツキが咲いてきれいよ」。
 階段の上には「神木天満宮」。以前は神木本町の等覚院にあった神社で、江戸後期にこの場所に移されたそうです。境内には黄緑色に萌えるモミジが風にやさしく揺れ、おだやかな時間が流れています。
多摩区長尾の妙楽寺の境外地仏堂として、<br>地域の人々に守られてきた千手堂。
多摩区長尾の妙楽寺の境外地仏堂として、
地域の人々に守られてきた千手堂。
道の角に赤い帽子とよだれかけのお地蔵さま。少し入っていった左手に「千手堂」と書かれたお堂があります。こちらは準西国稲毛三十三所観音霊場第29番札所。12年ごとの午年にご開帳が行われ(次回は2014年)、観音霊場めぐりをする人々が訪れます。
 「毎年5月8日には、お釈迦様の誕生を祝う花祭りが開かれます。お釈迦様が安置された小さな花御堂が季節の花々で飾り付けられて、きれいですよ」と話してくれたのは、千手堂の方。
 花祭りではお参りにきた人々が花御堂のお釈迦様に甘茶をかけて、お祝いをします。
 「どうぞお気軽におでかけくださいね。甘茶って、砂糖が入っているわけではないのに甘みがあって、おいしいんですよ」。
 千手堂からバス通りをめざして歩き、目の前に現れたのは森林公園前停留所。住宅街の後ろには、東高根森林公園のあふれこぼれるような新緑が迫っています。溝口駅南口行きのバスを待つあいだ、その圧倒的な姿をまぶしく見上げていました。

2009年4月中旬に取材しました。
文・写真・地図:森田奈央 
川崎市在住のフリーライター。散歩が好きで、好奇心のおもむくままに日々歩きまわっている。著書に猫を追いかけて歩いた「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)。