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宮前バスの旅

「城11 宮前平駅-新城駅前」の旅

提供:川崎市
宮前区内を走るバスは約45系統。坂が多い地域でもあり、バスは日常の足として欠かすことができないものです。
そんな移動手段としてふだん利用している路線バスも、のんびり“バスの旅”を楽しめば、窓の外には今まで知らなかった風景が待っています。
毎回、ひとつの路線を始発から終点まで乗車し、気になる停留所に途中下車。そこで出会ったものを紹介します。

路線案内

【運行バス】 川崎市バス
【系統名】  城11
【おもな停留所】 宮前平駅-馬絹-西福寺前-上野川-野川-千年-新城駅前
【運行距離】 約6.5km
【路線の特徴】 宮前平駅を出発した後、尻手黒川道路へ。野川交差点で中原街道に入り、巖川橋交差点で左折して武蔵新城駅前へ。途中にJR貨物梶ケ谷ターミナル駅がある。
宮前平駅<br>
宮前平駅
馬絹
馬絹
金山<br>
金山
上野川
上野川
能満寺<br>
能満寺

バス旅記

階段脇に灯籠が連なる<br>馬絹神社<br>
階段脇に灯籠が連なる
馬絹神社
前回、鷲ヶ峰営業所から出発して宮前平駅に到着した宮前バスの旅。今回は宮前平駅から発車するバスに乗り込み、再び尻手黒川道路を走ります。行き先は新城駅前。宮前区を飛び出して中原区にある停留所が終点です。
 さっそく宮前平駅を出発し、西平台、東平台と過ぎて、次の停留所は馬絹。馬絹とはおもしろい地名、確か「馬絹神社」という神社があったはず、と下車します。
境内でひときわ目を引く<br>御神木<br>
境内でひときわ目を引く
御神木
歩き出してすぐに見つけたのは宮前区役所宮前連絡所。ここでは戸籍謄本、住民票の写しなどの発行が行われるほか、宮前区の見どころを紹介した『宮前区ガイドブック』、生活に役立つ情報がいっぱいの地域紙やチラシなどが無料配布されています。
 助かった!と、宮前区ガイドブックを手に取り、マップで馬絹神社の場所を確認。国道246号を越えてずんずん行った先に、バス停馬絹神社前がありました。ここで降りればよかったんだ……。

 「灯籠は地域の人々が奉納したもの。10月15日の例大祭にはロウソクが灯されてきれいだよ。出店も並んでとってもにぎやかなんだ」。馬絹神社の境内で会った人が教えてくれます。本殿のとなりには古木の一部が奉られ、「御神木 千年の松 古代頼朝公が松に馬の袖絹を掛けたとの伝説あり故に馬絹とも云へり」と筆文字。歴史を感じさせる木肌からは後光が放たれているように見えました。
ここに7世紀の古墳が眠っている<br>
ここに7世紀の古墳が眠っている
神社の裏にまわると、7世紀後半に造られた円墳「馬絹古墳」。遺体を安置する全長9.6メートルの横穴式石室が発見されたとあり、この地に古くから人が住んでいたんだなぁと感慨深く見ます。一帯は公園に整備され、古墳についての説明板や「ふるさと“たちばな”文化財探訪マップ」などが設置。ここより東に古墳と同じころに創建された「影向寺」があると読み、よし、行ってみよう!
たすきがかけられている地蔵尊<br>
たすきがかけられている地蔵尊
坂をどんどん下って尻手黒川道路に出ると、ちょうど金山バス停。目の前にJR貨物梶ヶ谷ターミナル駅が横たわっています。馬絹古墳公園では時折汽笛が聞こえ、家々のあいだから貨物列車の長い列が見えました。貨物車はここから各地方へ向かうんだと思うと、胸がわくわく。貨物コンテナを積んだ大型トラックが力いっぱい走って行く道路をこちらも再度バスに乗り込んで行きます。

 宮前区ガイドブックのマップに影向寺の字を見つけ、上野川で下車。坂道が二又に分かれる角に赤い毛糸のかわいい帽子をかぶった「子育て地蔵」さま。みかんやおだんごが供えられていて、地域の人々に大切にされているようです。第三京浜道路の流れを見渡せる高台には「西 大山道 東 江戸道」と彫られた巡拝塔が立っていました。
ほうきを持った地蔵が<br>かわいい<br>
ほうきを持った地蔵が
かわいい
第三京浜の陸橋を渡って、境内にサクラ、シイ、モチノキ、イヌシデといった川崎市の保存樹林が並ぶ「野川神明社」に寄り道した後、影向寺へ。
 影向寺は奈良時代の天平12年(740)、聖武天皇の命を受けて開創した川崎最古の寺。新たな発掘調査では創建の年代は奈良時代以前まで遡ると考えられています。平安後期の木造の薬師三尊像は国指定、本堂の薬師堂は県指定、太子堂に安置された木造聖徳太子像は市指定と、重要文化財がたくさん。

 寺のいわれとなった霊石「影向石」の霊水は眼を患う人々を癒すとされ、くぼみに今でも水を湛える様子が見られます。また、樹齢600年の樹高28メートル、周囲8メートルの「乳イチョウ」は、「乳柱を削って汁を飲むと乳が出るようになる」という伝説があり、それはそれは立派な枝ぶり。「今年は12月中旬がいちばんきれいな時期ですね」とご住職さんがおっしゃっていたように、イチョウの葉は真っ黄色に染まり、舞い降りた葉は黄金のじゅうたんとなっているのでした。
塩ゆでエンドウ豆を袋詰め中<br>
塩ゆでエンドウ豆を袋詰め中
境内にカツーン!と鳴り響く鹿おどしの音を背後に、住宅街を通り、急な坂道を下って行きます。馬絹古墳とともに7世紀から伝わる文化財が身のまわりにあることに驚くのと同時に、その年月に比べて人間の命はなんて短いのだろうと考えます。そして、影向寺の脇寺のひとつ「能満寺」に寄って鐘楼を見上げ、もうすぐ新しい年が明けるなぁと、しばし佇みました。
かわさき名産品に認定された甘納豆<br>
かわさき名産品に認定された甘納豆
さて、能満寺の山門をくぐって路地を行き、広い通り出たら、反対車線にバス停能満寺。その次の停留所は影向寺。またもや、ここで降りればよかったんだ……。
 そして、気がついたのは、甘納豆の「駿河野製菓」。創業して46年、防腐剤をいっさい使わず毎日手作りしている甘納豆の製造直売所です。おかあさんたちが手際よく作業をしているなかにお邪魔すると、「塩ゆでエンドウ豆、食べてみて!」。ん~、ほどよい塩加減で、お豆があまい! これは止まらなくなる。
 聞けば、炊きあがったごはんに入れたり料理に使ったりしてもおいしいとのこと。白花、小豆、お多福、そら豆などが入ってお得の「お好み」甘納豆もお土産にして、能満寺から新城駅前行きのバスに乗ったのでした。
文・写真・地図:森田奈央 2006年12月に取材しました。
川崎市在住のフリーライター。散歩が好きで、好奇心のおもむくままに日々歩きまわっている。著書に猫を追いかけて歩いた「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)。