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宮前バスの旅

「溝21 有馬第二団地前-溝口駅南口」の旅

第13回

提供:川崎市
宮前区内を走るバスは約45系統。坂が多い地域でもあり、バスは日常の足として欠かすことができないものです。
そんな移動手段としてふだん利用している路線バスも、のんびり“バスの旅”を楽しめば、窓の外には今まで知らなかった風景が待っています。
毎回、ひとつの路線を始発から終点まで乗車し、気になる停留所に途中下車。そこで出会ったものを紹介します。

路線案内

【運行バス】 川崎市バス
【系統名】  溝21
【おもな停留所】 有馬第二団地前~久末~千年~溝口駅南口
【運行距離】 約7.8km
【経路】 有馬街道(久末鷺沼線)にある有馬第二団地前停留所を出発。第三京浜道路をくぐり、久末交差点で左折。中原街道を進み、千年交差点を左折。市民プラザ通りを走り、橘交差点で右斜め方向へ。再び第三京浜道路をくぐって直進し、溝口駅南口停留所に到着。
【特徴】 高津区にあるJR武蔵溝ノ口駅、東急田園都市線溝の口駅につながる路線。運行回数は平日、土曜、休日すべて1時間に1~3便で、朝を除けばだいたい1時間に1便。通り沿いには住宅、商店、飲食店などが並び、一部では畑が広がっている。
有馬第二団地前<br>
有馬第二団地前
稲荷坂<br>
稲荷坂
能満寺<br>
能満寺
野川<br>
野川

バス旅記

整然と並ぶ有馬第二住宅。<br>真ん中に流れているのは有馬川<br>
整然と並ぶ有馬第二住宅。
真ん中に流れているのは有馬川
溝口駅南口行きが発車する有馬第二団地前停留所。溝口駅南口停留所から走ってきたバスが転回し、待機する「市バス折返し場」の片隅にバス停のポールが立てられています。時刻表を見ると、今度のバスが発車するのはまだまだ。1時間に1便の運行なので時間を見計らわないと、たっぷり待つことになるのです。
 それならばと通りを横断し、バス停の名前でもある「市営有馬第二住宅」の方へぷらぷらと散歩。有馬川をはさんで、クリーム色の5階建て集合住宅が整列しているのが見えてきました。
食パンや菓子パンを製造販売している<br>パン工房あすか。<br>営8:00~20:00頃、<br>土曜休、電044-854-2241<br>
食パンや菓子パンを製造販売している
パン工房あすか。
営8:00~20:00頃、
土曜休、電044-854-2241
と、そこで漂ってきた芳ばしい香り。焼きたてのパンの香りです。しかも、子どもの頃に食べていた近所のパン屋さんを思い起こさせるような甘い香り。懐かしい香りだなぁとたまらずに、「Bakery ASUKA」と書かれた建物のサッシ戸をカラカラと開けて「こんにちはー」。こんがり焼き上がったばかりの胚芽食パンが並んでいるのが目に飛び込んできました。
 「添加物はいっさい使用せず、粉、水、イースト、バター、塩、砂糖のみの材料でパンを作っています。店舗はなく、注文を受けたものを製造販売しているんですよ」と、「パン工房あすか」のおかあさん。
 「食パン1斤でもあんパン1個でも前日までに注文していただければ、どなたにでも焼いて販売します。注文されていなくてもパンがあれば売ることができますので、散歩の方がふらりと寄って買っていかれることもありますね」。
 さっそく胚芽食パンをスライスしてもらい、歩きながらパクっ。しっとりふわっふわで、みみがカリカリ! ほんのり甘くて芳ばしい~! と大感激です。
横浜市側は住宅、川崎市側は植木園。<br>宮前区にはほんとうに植木園が多い<br>
横浜市側は住宅、川崎市側は植木園。
宮前区にはほんとうに植木園が多い
満たされたお腹と心を抱え、両側を植木園に挟まれた道をずんずん歩いていきます。つい先日まで独特の香りを放っていたキンモクセイの花は散り、1本1本の足下にオレンジ色のじゅうたんが敷かれているようです。紅葉が始まっている木も見られ、こんな身近な場所で紅葉狩りを楽しめるなんて、さすが植木の里宮前区! と嬉しくなります。
 有馬小学校の校庭の横に伸びる坂道をやっとこ上ると、尾根道。道の向こう側の住所は横浜市都筑区北山田です。川崎市と横浜市の境を走る道で、江戸時代には南野川と王禅寺方面を結ぶ「峯道(みねみち)」と呼ばれていたそうです。
有馬大塚のてっぺんに奉られている<br>赤い祠は「伏見稲荷」<br>
有馬大塚のてっぺんに奉られている
赤い祠は「伏見稲荷」
秋晴れの青い空がさわやかな日。木々に実った真っ赤な実や大きなつぼみが今にも開きそうな菊の花を眺めながら歩くのが気持ちよく、“バスの旅”だというのに、バスに乗るのをすっかり忘れてしまっています。
 県営有馬団地の公園では、おばあちゃんがひなたぼっこ。「こんにちは」と声をかけてくれます。公園のとなりの敷地はフェンスに囲まれ、こんもりと小さな山。赤い鳥居をくぐって石段を上ると、灯籠の奥に赤い祠が建てられていました。
 『宮前区ガイドブック』によると、これは「有馬大塚」。いつの時代のものか、どういったものかは説明書きがなく、通りがかりの人に聞いても「公園は『たぬき公園』って呼ばれているけど、こっちの山は何かわからないねぇ」。公園の入口に、ぽんぽこお腹のたぬきの像が立っていました。
わくわくがいっぱいの<br><br>
わくわくがいっぱいの

急坂となった尾根道を下り、有馬川に架かる稲荷橋を渡ります。交差点の向こう側へ急ぎながら見つけたのは、「南野川ふれあいの森」への案内図。よし、行ってみよう! と細い坂道を上っていきます。
 南野川ふれあいの森は、野川台地の斜面の雑木林がそのままの姿で残されている森。市民ボランティアグループ「野川はあも」が毎月第一日曜(月によって変更あり、雨天の場合は翌週)の午前10時から、林が若返るための伐採や下草刈り、倒木の整理、落ち葉かきなどの作業を行い、緑を育て、守っています。
 活動時には森の中の植物や昆虫を観察したり、シイタケ栽培に挑戦したり、見晴台を造ったりも。大人も子どももだれでも参加でき、自然をめいっぱい楽しんでいるようです。少し散歩しただけでも、どんぐりをたくさん見つけられて大満足。ようやく稲荷坂停留所からバスに乗ります。

●「野川はあも」についてはhttp://216.jp/
川崎最古のお寺、影向寺。<br>山門の横のケヤキが<br>色づき始めていました<br>
川崎最古のお寺、影向寺。
山門の横のケヤキが
色づき始めていました
バスにしばし揺られて下車したのは、能満寺停留所。『宮前区ガイドブック』に「能満寺停留所近くの『JAセレサのコスモス畑』が10月下旬~11月上旬に花の見頃を迎える」と書いてあったからです。
 そういえば、「宮前バスの旅 第2回 城11 宮前平駅-新城駅前」で訪れた「能満寺」はどこだったかなぁと歩き始めます。芝生広場「たちばな古代の丘緑地」に立てられていた地図看板「たちばなの散歩道」で位置を確認。第三京浜道路の方へ歩いて行くと「影向寺」、能満寺への道は工事中だったため、別の道へ進むと「野川神明社」が見えてきました。
畑一面にいくえにも連なるコスモス。<br>秋を感じさせます<br>
畑一面にいくえにも連なるコスモス。
秋を感じさせます
境内のとなりにはコスモスの花がたくさん。あっ、ここがJAセレサのコスモス畑か! 花の見頃は10月下旬~だったはずですが、看板に「コスモス景観会9月29日~10月4日、摘み取り体験ができる日10月5日」と書かれ、すでに終了(後日、JAセレサに問い合わせると、天候によって変わるとのことで、ここ2~3年は10月上旬が見頃だそうです)。
 犬の散歩の人が「いつもは景観会の摘み取りが終わるとすぐに刈り取られるんだけど、今年はいつもより花が残っているからかな、まだ刈り取られないね」。
 うん、夕陽に照らされて、きれい……と眺めているうちに、秋の日はつるべ落とし。いつのまにかあたりは真っ暗です。バス通りをめざすと、すぐに野川停留所を発見。んん? 能満寺停留場ではなく、野川停留所で下車すればよかった?? と思いながら、溝口駅南口行きのバスを辛抱強く待ちました。
文・写真・地図:森田奈央 2008年10月中旬に取材しました。
川崎市在住のフリーライター。散歩が好きで、好奇心のおもむくままに日々歩きまわっている。著書に猫を追いかけて歩いた「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)。